| 事故は何故繰り返されるのか? −−(1)事故情報の遅延と隠蔽−−
Q「まーあ驚きましたね。ナショナルのFFストーブから始まって、シンドラーエレベーター、そしてパロマ瞬間ガス湯沸かし器、と思っていたら九州に飛んで品質・安全超優良企業のトヨタがリコール隠しで歴代の製造部長3人が書類送検と続きました」 A「いずれもハインリッヒの法則や他山の石を完全に忘れていますね」 Q「それどころか、シンドラーもパロマも最初の社長会見では我が社の製品には責任がない。エレベーターの乗り方が悪いと、なにか狐に包まれた感じ。エレベーターに乗り方というのがあるのですかね」 A「これは雪印の工場長の言葉「こっちは寝ていないんだから……。」に似ていますね。ぽろっと本音がこぼれたと言う事でしょう。」 Q「パロマにしてもこれは工事業者の誤りだと言って、3日も経過しないうちに製品に故障箇所が発見されて……。」 A「ちょっと、ここで安全文化に関する話をしておきたいと思います。後で本題に関係あるかも知れません。シンドラーのスミス社長が『乗り方が悪い』と言ったのは実は歴史がありまして、長い間ヨーロッパのアパート等では手動扉のエレベーターを使っていました。その上電車の飛び乗りと同じように扉が閉まる寸前に乗り込んで、扉を押さえ込んだりして乗っていました。まあ、日常の慣れから来る不安全行動ですね」 Q「手動扉で、危険な乗降では怪我も出ますね」 A「1983年に中災防主催のヨーロッパの安全衛生優良企業視察団に参加しましてね、独逸のシーメンスを見学しました。流石に先進国、薬品戸棚には全て排気筒が付けられていました。又、アイシャワー、全身シャワーは何処に行ってもありました、しかしシーメンスの本社事務所には扉の無いエレベーターがあって、吃驚しました」 Q「一体どんな?」 A「壁に扉のない狭い入り口がありました。その中でロープ式で一人乗りのエレベータがゆっくりと降りてきます。床面が揃った所で飛び乗りです。ロープにお盆が付いていると思って下さい。勿論、下りなら下り専用で、昇りは隣に入り口があります」 Q「へーっ、驚いた。これだと乗り方が悪かったと言えますね」 A「日本では私の子供の頃(昭和10年頃)から二重扉でした。ですが中側の扉は鎧戸で縦格子手動てしたので開閉の際にも、手を挟む危険がありました」 Q「当時はエレベーターガールと言う美しいお嬢さんが乗っていたそうで」 A「そうです。そのお嬢さん方、子供が鎧戸に近づくと鎧戸と子供の間に入って子供がうっかり手を出さないように身体を張って護っていました」 Q「それでもうっかり手を出せば壁との擦過傷になる」 A「その通り、現在では工場で旧式の簡易リフトに鎧戸が付けられているのを見かけますが、監督署の指導で網を張ったりカーテンを下げたりしています」 Q「なるほど文化を知るためには発展の歴史を勉強しなくては……。」 A「今回の港区区民向け住宅“シティハイツ竹芝”エレベーター事故の前に、米国でも昇降中に突然扉が開いて子供が墜ちたり、上昇中に加速し最上階の天井にぶつかったりして死亡者が出ていますね」 Q「それなのに我が社の製品は安全で事故を起こした事がないと社長は思っているらしい。だとするとまさに裸の王様ですね」 A「それと今回国内の事故多発は日本国内のシンドラー社(元日本エレベーター梶j製の ものが多いようですね。その情報がスイスの本社まで届いていなかったようです」 Q「裸の王様現象はパロマガス瞬間湯沸かし器でも見られるようですね。なにしろ20年前の事故から連続的に27件も発生していたのに、悪い情報は本社に来なかった。もっと早くから死因が一酸化炭素と気が付けば……。」 A「前回のナショナルFFストーブの際も、そうでした。一酸化炭素の恐さを担当社員がどの程度知っていたか。たしか昭和34年に国会で取り上げるほどの大事件がありました。 東京ガス鰍ェ家庭用ガスストーブの不完全燃焼で、死者を数十名出して、国会で証人喚問をされました。 その結果、ストーブの製造販売は一切廃業して、新しく「バランス風呂釜」を開発し、別会社「潟Kスター」を作り販売しました。これは大ヒットして、従来の風呂釜を駆逐する程でした。原理は送風機の付いてない自然換気のFF式と思って下さい。釜にゆったり余裕をもって設計された空気取り入れ口と、熱気排ガスが外筒・内筒二重になった形で取り付けられ画期的なものでした。この事件を皆さん忘れている」 Q「今回の事故、どうも地方色が濃いと思うのですが、もし、東京近辺で発生していたら,もっと早く情報が本社に届いたと思いますね」 A「これも安全文化に関係しますね」 Q「トヨタの事故はどうでしょう。これはリコール隠しで、しかも組織ぐるみの犯罪ですね」 A「これは根が深いですね。なにしろ8年間に渡り表面化しなかった。いやさせなかった。熊本県警の調査がなければ陽の目を見なかった事故です」 Q「一体、どんな内容なんで」 A「ちょっと複雑なんで、かいつまんで話しますと平成14年、トヨタは『ハイラックスサーフ』( 写真2005年型)の操舵機構=リレーロッドをリコールの対象にしました。これはハンドルの操作を前車輪に伝えるメカの一部ですが、前両輪間にある連結棒と思って下さい。これが金属疲労で折れた。その為に運転操作が不能となって対向車線に出て他の車と衝突事故になった」Q「ちょっと、怖い事故ですね」 A「県警は事故は以前からあった。リコールに上げるのが遅かった。つまりリコール隠しではないかと内偵を始めていました。調べてみると続々と出てきた」 Q「警察に内偵されて発見ですか……。これはまずい、組織として最低ですね。えっとこの辺でそろそろ纏めを」 A「そうですね。先ず問題点を整理しましょう。そして、その対策に移りましょう」 Q「問題点は私にやらせて下さい。 @トップが裸の王様状態だった。 A事故情報の集約と本社への伝達が遅かった。 B組織的事故隠しが未だに企業に残っている。 こんな処でしょうか?」 A「それでは対策は次号で……。」 (続) 参考資料 ・読売新聞2006,6,4, 朝刊 ・ライブドアニュース/ リコール王・トヨタ 欠陥車率3年連続100%超も、回収率さえ非公表 ・asahi.com>社会> 事件・事故> パロマ重大事故、電源プラグ外れ13件 排気連動せず(8月7日) ・J−CASTニュース/ パロマ製品は寒冷地で不具合多発 耐久性に問題か (2006/7/20) ・Response 【トヨタリコール問題】特殊なケースで発生すると認識していた (2006/7/13) 記事の下段に関連記事リンク有り。 ・国土交通省 トヨタ自動車(株)からの業務改善指示に対する報告書の提出について |
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| 事故は何故繰り返されるのか? −−(2)利益第一主義から顧客第一主義に戻れ−−
Q「対策となると具体的には各社各様の対策が必要になりますが、まず悪い情報が上に上がらない原因追及が必要ですね」 A「悪い情報は一刻も早く報告せよと、各社社員教育ではやっていますが、現場に出てみると、目前の異常が悪い情報か、それも報告に値する重要性があるか、自己判断に苦しみます。その時、黙っていたらどうなるかと、つい考えてしまいます。誰かが気付いて呉れるだろう。自分の仕事が遅れる、面倒だ。大体これは課長の仕事ですよ」 Q「と、言う事になって第一発見者の貴重な情報が埋もれてしまう。社内規定があろうと無かろうと、少なくともお客様の人命にかかわる事故については責任や原因の如何に関わらず報告するのが当たり前じゃ ないですかね?」A「パロマの場合は業者の不正改造がまさか死亡災害になると言う予測が出来なかった。プロでありながら一酸化炭素についての常識が薄かったですね」 Q「トヨタの場合はどうでしょう」 A「これはやや複雑でして、事故内容についてもう少し詳しく調べる必要があります。そもそも“据え切り”と言われる停車状態でハンドルを切る操作を最近では誰も気に掛けずやっていますが、これはハンドルがパワステ(油圧駆動方式)になったからで、昔は禁則でしたね。また、力も必要で女性には出来なかったです。ところが最近は皆さんおやりで車庫入れや、切り返しの際には、平気でこれを使っています」 Q「私もやっていますが、とても便利です」 A「そこでトヨタは車を停車した状態で“据え切り”を6万回やっても大丈夫という安全基準を作り守っていました」 Q「それが何で事故を……。」 A「まあ簡単に言えば製品にはバラツキはつきもので、多数の中には弱い物も混じっていた」 Q「だったら基準を上回る品質管理をまた、設計をすべきでしたね」 A「そのとおり。また破損状況からみて、今回の事故は金属疲労が原因ですから対策は容易だったはずです」 Q「そうですね。途中でリコール無しで設計変更して丈夫なリレーロッドを採用していますね。(1996)それでもその後、折れた」 A「この時にリコールすべきでした」 Q「先日飲み屋で偶然隣り合わせになった中年男性が自動車会社に勤務していて、安全管理をやっているというので話が弾みました。ところが話が進むと安全管理そのものの考え方が全然違うので驚きました。われわれは安全第一でやっていますが、彼らは予防安全と衝突安全に絞って色々な対策をやっているんです。」 A「そうですね。“安全”という言葉は概念が広すぎて我々安全指導に携わる者も時宜を考慮して使わなければなりません。インターネットで”安全”と言う言葉を検索してみると感じるのですが安全という言葉は製品・商品の使用者を守るという観点から使われているのがほとんどですね。労働者の安全というのはかなり後から検索されます。私も同窓会で安全指導の仕事をしていると話したら友人からそんな仕事があるのかと怪訝な顔をされた事がありますよ」 Q「それで予防安全や衝突安全の中身は?」 A「自動車工業界の方は、自分や仲間の労働安全管理以外に、予防安全つまり、車が事故を起こさないためにはブレーキのきき具合から始まって、運転席の視野、座席の安定性と正しい姿勢、ライトの角度、明るさ、バックミラーの位置とか数限りなく入ります。そしてそれらに付いてベストを尽くす対策と検討をしていますね。また、衝突時には人命を如何に守るか衝突時の安全確保に努力しています。とても一般製造業の比ではありません。」 Q「本田宗一郎氏の有名な社長安全標語として『安全なくして生産無し』がありましたね。利用者の安全を考えない車を生産して貰っては困りますからね。 それにしても、誰かがやってくれるだろうと言う相互過信ですかね。リコールにするかしないか一体、誰が判断すんでしょう?。パロマにしろトヨタにしろ人身事故なんだから検証した警察から経済産業省や関係機関に連絡があってもいいんじゃないですかね」 A「その辺の責任の所在がはっきりしていなかった。また警察には民事不介入という原則があるからなかなか難しいでしょうね」 Q「パロマといい、ナショナルと言い、シンドラーエレベータといい、こういう事故が発生した場合、お客様の立場で事故の予防を考える部署があっていいですね」A「まったくそのとおり、それが品質保証部なんです。もう一つ今回の共通点は各社とも10年間を越える期間問題点を抱えていたという事です。」 Q「すると、どうすればよいでしょうか」 A「これがなかなか難しい問題で、トヨタの場合がいい例になりますが、3代にわたって部長が問題点を抱え込んでいた。つまり問題か問題にしないか判定の難しかった面もありますが、お客様の立場に立てばもっと早くリコールすべきでした」 Q「逆らうようですが、べきだったと言っても解決策にはなりませんね。一体どうしたらいいでしょうか」 A「今までの企業文化を根本から見直すしかありません。企業は利益を得て持続可能になりますから、どうしても利益第一主義に陥りやすいのです。つまり営業でも製造でも長年現場を歩いてきたサラリーマンなら身にしみてわかっている事ですが、ある部門に新しくA部長が配属されたとします。その部長は部下の心を掴むのが上手く、かつ現場の問題解決能力にも優れていて、前任部長が残していった問題まで片づけた。するとその部門の業績は上がり誰の目にもA部長の業績と能力を認めることになります。A部長はその実績や実力を買われて今度は別な支社の支社長に抜擢される。つまり現在の企業発展のシステムは業績、利益第一主義ですから、つい顧客の安全を忘れてしまう。あえて言えば企業の利益確保システムは構築するが、顧客の安全確保システムには見向きもしない。ここでリコールをすれば会社もマイナス、自分もマイナス、前任の部長もやらなかったのだから踏襲が最良の選択と考えてしまう。最近、CSR(企業の社会的責任)論やコンプライアンス(企業の法令遵守)が叫ばれていますが、これはバブル当時の企業倫理の反省をやっている訳です」 Q「やり方を変える必要がありますね。今回のように書類送検になった部長は出世ラインから当分外される。そんな事にならないよう救済措置として、例えば『上申免責制度』をもうけて、お客様のクレームや自分で気が付いた欠陥を、抱え込まずすぐ上申する。上申すれば責任はない。という風に。責任云々と言う点はちょっと極論ですが……」 Q「一方お客様の苦情や希望や気付いた事を気軽に受け止めてくれる電話窓口が欲しいですね。又、国に対しても同じような窓口を作って欲しいですね。110番や119番のような市民の声が直接届くような。 対策は引き続き私にやらせて下さい」
・独立行政法人「製品評価技術基盤機構」
・財団法人「製品安全協会」 ・国民生活センター “暮らしの相談窓口” ・TOYOTA リコール等情報/上記tTOYOTAホームページの右上にあります。 安全技術 ・内閣府共生社会政策統括官第8次交通安全基本政策 ↑特に下段の公聴会報告書「その4」を一度お読み下さい。 ・(財)日本自動車研究所 くるま学園/まめ知識/衝突安全 |
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