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A U R I C U L A S |
| 栽培してみたい品種の推薦 |
植物分類学上のオウリキュラは、プリムラ・プベスケンス(Primula × Pubescens)そのものとされる。P.プベスケンス(異名プリムラ・ヘルベチカ)は欧州アルプス産のP.オウリキュラとP.ヒルスタとの自然交雑種だが、現在では人工交配による多くの品種を含んでいる。そのうちで一定の約束事に沿って交配育種されてきたのがオウリキュラの品種群で、たとえ園芸種といえども冷涼な高山帯を起源に持つ植物なので、高温多湿の日本ではかなり栽培が難しい。ことに園芸誌の編集者や、オウリキュラの存在を知ったばかりの初心者が目を輝かせる個性的な花……「粉を吹く黒やグリーンの花など、オウリキュラらしい特徴を持つもの」=ショウ・オウリキュラは一様に難物と考えた方が適切である。庭園への植栽を意識して作出されたボーダー系以外は、本場の英国でも無加温室やアルパインハウスで鉢植えにされて丹念に育てられている。
日本の関東、関西方面でも夏越し可能で、比較的栽培が容易な品種を選ぶとなると一苦労である。ボーダー系ならば何とか育つと思われるが、長い梅雨時の管理を考えると、やはり鉢栽培で雨や水滴を避けて栽培し、一般の高山性プリムラと同様に扱うことが要求される。栽培上の条件や管理の仕方は他のオーリキュラ節のプリムラと同じなので、P.ミニマの交配種や、P.プベスケンスの魅力的な品種の栽培から入って、より難しいオウリキュラ栽培に向かうのが、栽培のノウハウを知るには理想的だと思う。
| アルムの丹さんがオーキュラをコレクションするようになったきっかけ、etc... |
原種だけでも500種を越すプリムラ属は、山草栽培では大きな位置を占める属で、この趣味に魅せられて以来、積極的にこの属の栽培に取り組んできた。山草栽培は原種にこだわる側面を持つ一方で、オリジンの姿が見える範囲での交配種を取り入れることで発展してきたが、その究極の到達点がオウリキュラの世界に見えているような気がする。日本サクラソウと好対照をなすオウリキュラには、実に好ましい美意識の集積と、育種の歴史が感じられる。原種の血はもう相当に薄いのだが、いまだにプリムラ属本来の美しさも失っていない。プリムラにこだわる山草園芸家ならば、オウリキュラはいつか出会うべき植物と言えるかもしれない。しかし、本場の英国ではオウリキュラは身近にありすぎるせいか、これをコレクションする山草家はあまり多くはない。繁殖率が低いこともあって、たいていの山草ナーセリーではボーダー系かアルパイン系の数種程度しか扱っていないのが普通である。
英国的な個性豊かなナーセリーを日本で再現することを夢見ている僕は、これまでに多くの海外産山草を導入し、自ら新品種の育種にも努力してきたが、そうした努力で得た植物は、自ら導入や育種の努力をせずに、利益の出る植物を安易に入手しようとする大多数の山草業者には、格好の材料だった。ひとたび自分の手を放れると、原産地情報も学名も失われて、怪しげな和名をつけられ、瞬く間に大量に流通するようになった植物を見るのは悲しくもあった。オウリキュラの繁殖率の低さは、そうした日頃の憂さ晴らしにも打ってつけであった。
しかし、ボーダーやアルパイン系統以外は、なかなか手に入らなかった。繁殖率が低いので当然だが、探し当てた英国の専門ナーセリーでも、珍しい品種となると毎年10数株しか売り物がない。売り手市場なので、手間のかかる輸出までしてくれるところは見つからなかったが、あるナーセリーで当方の日本サクラソウのコレクションのビデオを見せたところ、さすがにプリムラのプロだけに日本サクラソウにも相当の予備知識を持っていて非常に興味を示した。結局、相互に輸出する合意ができ、現在のコレクションが実現する事になった。
これとは別に米国のオウリキュラ育種家から手に入れた一群があって、この系統は強健な上に、実生でも良個体が出る確率が高く、育種用に大切な親株となっている。人工授粉の実生株の中には、すで幾つか選抜命名した個体があり、一部は昨年から販売もしている。
オウリキュラは交配の歴史が長いので、通常の実生では名花が出現がしないため、我が国では普及していないが、最近では正統的なオウリキュラを栽培している園芸家も少しずつ増えており、日本国内での交配苗からよい個体がでる可能性も高まっている。
正統的なオウリキュラの品種には、一定の条件や規格が求められているが、日本でオウリキュラとして売られているものの大半は、この条件や規格に合わないもので、プベスケンスそのものや近縁のプリムラとの交雑種が多い。最近出版の本にも、有名なオールドアイリッシュブルーとして長花柱で赤紫色の平凡な個体の写真が掲載されていたが、オウリキュラ園芸の世界では原則として長花柱は観賞用と見なされていない。プリムラ属のほとんどは基本的に長花柱、短花柱の二型花なのだが、オウリキュラに限らず英国産のプリムラ交配品種は短花柱ばかりである。
このほかに良い個体の条件として、花弁の隙間が無く円環形で、花弁数が6枚以上あること。花は完璧に平開し、花弁や中心円環に歪みがなく、円環の外側の境界が明瞭であることなど、コンテストの際にもポイントとされる約束事がいろいろある。