東京人権と生活運動連合会

トップ

自己紹介

運動方針

主   張

話題と出来事

都の人権施策

ご相談はお気軽に

東志郎の写真日記

同和問題

リンク

 

 

東京人権連 > 同和問題について >足立東京高裁判決1989

 

 1989年4月26日、東京高裁が「解同」足立支部による「建物利用権確認請求事件」について棄却した判決を紹介します。この裁判は最高裁でも上告が棄却され、確定しています。

(色つき文字=強調部分は東京人権連による。漢数字は算数字に、かなはすべて大文字であったが適宜小文字に直した)


昭和63年(ネ)第918号建物利用権確認請求事件

判  決

東京都足立区竹の塚3丁目8番1号
 控訴人 部落解放同盟東京都連合会足立支部
 右代表者支部長 鈴木幸一郎
 右訴訟代理人弁護士 内藤隆
 同 的場 徹
 同 井上 豊治

東京都足立区千住1丁目4番18号

 被控訴人 足立区
 右代表者区長 古性直
 右指定代理人 皆川央
 同 山口憲行
 同 小川賢一
 同 嶋本全宏

主  文

本件控訴を棄却する。

控訴費用は控訴人の負担とする。

事  実

第一 当事者の求めた裁判

1 控訴人

(一) 原判決を取り消す。

(二) 主位的請求

控訴人が、原判決添付別紙物件目録記載の建物について、控訴人、被控訴人間で昭和48年12月21日締結された契約期間の定めのない建物使用貸借契約に基づく建物利用権を有することを確認する。

(三) 予備的請求

 控訴人が、原判決添付別紙物件目録記載の建物について、被控訴人の昭和48年12月21日付目的外使用許可処分に基づく建物利用権を有することを確認する。

(四) 訴訟費用は第一、二審とも被控訴人の負担とする。

2 被控訴人

 控訴棄却

第二 当事者の主張及び証拠

 当事者双方の事実上の陳述及び証拠関係は、次につけ加えるほか、原判決事実摘示(ただし、原判決書3枚目表6行目中「殴米」を「欧米」に改め、同裏6行目、同5枚目表2行目、同4行目中「東京都」の下に「足立区」を加え、同9枚目裏6行目中「法」を「地方自治法(以下「法」という。)」に、同10行目中「公有」を「区有」に、同12枚目表6行目中「うち、」から同8行目中「余」までを「事実」に、同裏5行目から同6行目にかけて「明らかに争わない。」を「認める。」に改める。及び記録中の当審における証拠目録記載のとおりであるから、ここにこれを引用する。

一 控訴人

 1 本件建物利用の権利性

 (一) 本件建物は、同和対策審議会答申及び同和対策事業特別措置法の精神に則り、歴史的、社会的理由により生活環境等の安定向上が阻害されている人々の振興と福祉の増進を図ることを目的として建設されたものであるところ、部落差別の歴史的社会的な根深さを考慮し、かつ、このような差別をなくすことは、憲法上の要請であることに鑑み、本件建物は差別がなくなり真に部落民の基本的人権が保障されるようになるまで存続することが予定されていた。

 (二)したがって、控訴人による本件建物の利用は、単に同建物内部の施設、設備の利用に止まるものではなく、同和対策審議会答申の趣旨に則り部落差別をなくすことを直接の目的として自主的に建物自体の管理運営利用を継続する関係として位置づけられなければならず、その利用の法律関係についても右趣旨に基づき控訴人の法的権利性を認めざるを得ないのである。

 2 信義則違反

 被控訴人が本件建物につきこれが行政財産であるとして控訴人の利用を拒否するのは、実体法上、訴訟法上の信義則に違反する。

 (一) 被控訴人は本件建物を当初公園管理事務所として位置づけていたのに昭和48年12月26日以降これを東京都足立区同和対策協議会連絡事務所へと用途変更をしたが、被控訴人は右行政財産の用途変更につき足立区公有財産運用委員会規程2条7号所定の「行政財産の用途変更については同委員会が調査審議する」旨の定めに違反して、これを遵守していない。

 (二) また、被控訴人は、法律的知識に乏しい控訴人に対し本件訴訟の前後を通じ本件建物が行政財産であること、控訴人が本件建物を常時独占的に使用する権利のないことなどにつき何らの説明をすることもなく、ただ十数年間その審理運営を控訴人に一任してきた。

 (三)したがって、被控訴人が本件建物につき自らは前記行政財産の用途変更のための手続きを履践しないまま、控訴人に対しいきなり利用拒否の挙にでることは、これが建物の継続的利用関係であることからも甚だしく信義則に違反するものである。

 3 区民の批判

 日本共産党は、本件建物の建設後僅か2か月を経た昭和49年2月、部落解放同盟正常化東京都連絡会議を結成し、それまで控訴人の代表者支部長の地位にあった田中英苗が控訴人から離脱して右連絡会議の足立支部長に就任したが、同党区議会議員は、同年3月、6月、9月の各議会において、控訴人による本件建物の利用につき批判的発言を繰り返し、かつ、前記田中英苗は昭和55年3月及び同56年6月本件建物の利用に関し同旨の陳情を行い、これが採択された。

 しかし、足立区議会に対し右のような控訴人の利用を非難する意見を述べたのは日本共産党のみであって、他の政党、会派又は市民個人の批判的意見は一切なかった。

 4 使用借権の時効取得

 (一) 控訴人は昭和48年12月28日被控訴人から本件建物の鍵を交付され、その占有を開始して現在まで15年余、本件建物を控訴人の事務所として平穏かつ公然と占有を継続した。

 (二) 控訴人は、右占有開始当時、本件建物を部落解放運動が目的を達成するまで無償で使用する権利を有するものと信じていたものであり、控訴人の目指す足立区における部落差別解消運動も、現在その中とにある。

 (三) 以上により、控訴人は本件建物の使用貸借上の権利を時効取得した。よって、本訴において右時効を援用する。

 5 被控訴人の主張に対する認否

   被控訴人の後記主張は、これを争う。

二 被控訴人

 1 信義則違反の主張について

 (一) 東京都足立区公有財産管理規則(昭和39年4月1日規則第10号)36条及び東京都足立区公有財産運用委員会規程(昭和39年4月1日訓令甲第5号)2条7号にいわゆる行政財産の用途変更とは、行政財産として正式に一定の用途に供することが決定され、供用されている財産を他の用途に変更する場合をいうものであるところ、本件建物は、建設中は公園管理事務所用建物として取り扱われていたが、完成後に公有財産の総括管理を行う総務部管財課に引き継がれ、同課で財産台帳に記載したうえ、同和対策事業の主管課である総務部総務課に引渡されたものである。したがって、本件建物は、当初公園管理事務所として予定されてはいたものの、それが正式に用途を決定する前の段階で予定されていた用途を変更し東京都足立区同和対策協議会連絡事務所としたものであって、上記規則ないし規程に定める行政財産の用途変更の場合に当たらないから、公有財産運用委員会の調査・審議を経なくても何ら手続き規程に違背しない。

 (二) 被控訴人は、控訴人が本件建物に設けられた同和対策協議会連絡事務所を本来の用途、目的に反して使用した場合、例えば、右連絡事務所に控訴人の事務所であるかのような掲示がなされたり、また、同連絡事務所を控訴人の支部員らが夜間宿泊に利用したりした際には、強くその禁止を求めるなど、控訴人に対し本件建物を控訴人の事務所として利用することはできない旨繰り返し注意を与え、控訴人による違法利用の是正措置を講じてきた。

 2 使用借権の時効取得の主張について

 (一) 使用借権は、不動産賃借権と異なり、物権性に乏しく、時効取得の対象となり得ない。

 (二) 本件建物は、現に行政目的に供されている行政財産であるから、その上に私権としての使用借権の成立する余地はない。

 (三) 被控訴人は、控訴人が本件建物を東京都足立区同和対策協議会連絡事務所として利用するに当たり、控訴人との協議を経て、東京都足立区同和対策協議会連絡事務所要領及びその運用方針を定めたが、右事務所要領及び運用方針中には、本件建物を足立区の同和対策事業を強力に行う施設である行政財産とすること、施設に必要な備品等の設備は被控訴人が準備すること、施設の維持管理は被控訴人が行うものであること、控訴人は本件建物の利用が終了したときは施設設備を原状に回復すること等につき明記されている。したがって、控訴人がその占有の初め善意であったとは到底いえないし、少なくとも控訴人には過失があり、10年の時効取得は成立しない。

 (四) 被控訴人は、控訴人に対し本件建物を同和対策協議会連絡事務所としての使用を認めたのみで、使用借権が存在するような形態での使用を容認したものではないから、控訴人の占有が平穏かつ公然であったとはいえない。

 (五) 被控訴人は、控訴人に対し、10年の取得時効の成立以前である昭和58年1月31日本件建物の明渡しを求めており、控訴人が本件建物の利用権確認を求めて本訴を提起したのは同年3月16日であるから、控訴人主張の時効は右明渡し請求により中断した。

理  由

 当裁判所は、控訴人の本訴請求は、その主位的請求、予備的請求のいずれも理由がないものと判断するものであり、その理由は、次につけ加えるほか、原判決理由説示と同一であるから、ここにこれを引用する。

 1 原判決書15枚目裏1行目中「栗原潔」の下に「、当審証人藤沢靖介」を、同5行目中「甲第12号証、」の下に「乙第15号証、」を、同6行目中「第6、」の下に「第9、を」、同行中「第11号証、」の下に「右藤沢証言によって成立を認められる甲第31号証、」を、同18枚目表3行目中「命じられ」の下に「、その後、足立区立老人集会所条例(昭和48年12月10日公布)を参照し」を、同19枚目裏1行目中「栗原」の下に「、当審証人藤沢」を、同6行目中「15、」の下に「右藤沢証言によって成立を認める甲第32号証(ただし、本件建物の写真であることにつき争いがない。)、」を加え、同21枚目裏末行中「その旨」を「本件建物に同建物が控訴人の事務所として使用されている旨」に改め、同24枚目8行目中「被告は、」の下に「公園管理者として同公園の専用者である被控訴人に対し、」を加え、同10行目中「これ」を「これら」に改め、同27枚目表3行目中「同和対策」の下に「競技会」を、同28枚目表1行目中「部落解放」の下に「同盟」を加え、同29枚目裏末行中「実体」を「実態」に、同」30枚目表7行目中「同年」を「昭和58年」に、同32枚目表5行目中「による占用の許可を受け、」を「として同公園の占有者である被控訴人に対しその占有を許可し、」に、同7行目中「受けて」を「して」に改め、同32枚目裏8行目中「東京都」の下に「足立区」を、同33枚目表5行目「ため、」の下に「東京都足立区」を、同34枚目裏6行目から7行目にかけて「被告の」の下に「行政目的である」を加える。

 2 本件建物利用の権利性について

 上記引用にかかる原判決認定の事実に照らすと、本件建物に関する被控訴人と控訴人双方の協議の結果、東京都足立区同和対策協議会連絡事務所要領及び運用方針が定められ、それによると、本件建物は被控訴人が足立区内の同和対策事業を強力に行うことを目的とする施設であること、本件建物の維持管理は被控訴人が行い、その管理のため、被控訴人は、控訴人の推薦する2名を非常勤職員として採用し、施設に必要な設備、備品一式を提供するほか暖房用燈油、湯沸かし用プロパンガスを供給することとし、反面、控訴人は利用を終了したときは、利用した施設設備を原状に回復することが義務づけられていることが明らかであって、右によれば、本件建物は被控訴人の行政目的である同和対策事業推進のための施設として公用又は公共用に供する財産であるというべきであるから、法238条3項所定の行政財産に当たるものというべく、これは一定の除外事由のほかみだりに貸し付け、譲与等の処分をすることを同法によって禁止され、その違反行為は無効とされている(同法238条の4第1項、第3項)。

 したがって、以上のような事実関係に照らすと、原判決認定の控訴人による本件建物の使用、占有を前提としても、地方自治体である被控訴人が控訴人との間にその主張のような使用貸借契約締結の意思を有したものとは認め難く、また、黙示的は使用借権の設定についても、引用にかかる原判決理由説示のとおりこれを認め難く、他にこれを首肯するに足りる証拠もない。そうすると、控訴人による本件建物の利用関係は、被控訴人の行政目的である同和対策事業推進の一環として位置づけられているものであって、控訴人主張の実体的な権利に依拠するものとは認められないから、その余の点について触れるまでもなく、控訴人の本件建物利用をめぐる権利性の主張は理由がないものといわざるを得ない。

 3 信義則違反について

 控訴人は、被控訴人の本件建物明渡し請求は行政財産につき用途変更の手続を履践しないままなされたものだって信義則違反であると主張するが、東京都足立区公有財産管理規則36条、東京都足立区公有財産運用委員会規程2条7号にいう行政財産の用途変更とは、一定の使用目的に供されている行政財産を他の用途に変更する場合をいうものと解されるところ、被控訴人は、本件建物の建築にかかる時点では、敷地の都合上保木間公園内に建設する関係から公園管理事務所(土木詰所)とする予定でいたものの、昭和48年12月10日本件建物の完成後はその使用目的を一貫して同和対策協議会連絡事務所とし、かつ、その目的に副って本件建物を使用しており、その間に用途の変更をしたことはないから、控訴人のこの点に関する主張は理由がない。

 また、控訴人は、被控訴人が控訴人には本件建物を常時独占的に使用する権利のないことにつき事前に何らの説明をすることなく突然に本件建物明渡しの請求をするのは信義則に違反する旨主張する。

 しかし、控訴人による本件建物の利用は、被控訴人と控訴人とが協議して定めた東京都足立区同和対策協議会れんらく事務所要領や運用方針に則り実施されてきたこと、足立区議会に対し、本件建物を控訴人のみが全面的に使用している状態につきその是正を求める請願、区議会における発言等がなされ、昭和49年3月、6月及び9月の同区議会においてこれが審理されたこと、被控訴人が同区議会の同対委による視察の際に控訴人に対し本件建物を控訴人の事務所としている旨の掲示を撤去させたことがあることは前記認定(原判決引用)のとおりであって、これによれば、控訴人においても本件建物を全面的排他的、かつ期限の制限なく利用できる性質のものでないことを認識していたものと推認しうるから、被控訴人による本件明渡し請求が突然で信義則に違背するということはできず、この点についての控訴人主張も採用できない。

 4 区民の批判について

 控訴人による本件建物の利用関係は上記のとおりであるが、被控訴人は、その後区議会における上記認定の動き(原判決理由二の3(一)ないし(七))などを反映し、区民生活に関する諸施策との一体性を保つ見地から、区民の理解・協力を得られるよう運用に当たることを基本方針とすることにし、同対協も廃止の方向で検討を進め、そのれんらく事務所としての本件建物の利用廃止を決定したのである。

 したがって、被控訴人が控訴人による本件建物の利用を廃止するに至った原因は、必ずしも日本共産党ないしは東解連の区議会における発言や請願等のみによるものではないことが明らかであるから、この点の控訴人主張は失当である。

 5 使用借権の時効取得について

 本件建物は、上記のとおり、控訴人主張の利用期間中現に行政目的に供されていた行政財産であって、公共用財産としての形態・機能を全く喪失し、又は黙示的に公用が廃止されたものとは認められず、その上に私権としての使用借権を時効取得しうる余地のないものであるから、控訴人の右主張はその余の点について触れるまでもなく理由がない。

二 したがって、控訴人の請求は、その首位的請求及び予備的請求のいずれも理由がなく、これを棄却すべきであるから、これと同旨の原判決は相当であって、これが取消しを求める本件控訴は理由がない。

 よって、本件控訴を棄却し、訴訟費用につき民訴法95条、89条を適用して、主文のとおり判決する。

   東京高等裁判所第11民事部

        裁判長裁判官 松岡 登

            裁判官 牧山市治

            裁判官 小野 剛

(おわり)

東京地裁判決に戻る      →最高裁判決に進む

   

前のページに戻ります  このページのトップに戻ります  トップページに戻ります 

東京人権と生活運動連合会

 

お気軽にメールください

トップ

自己紹介

運動方針

主   張

話題と出来事

都の人権施策

ご相談はお気軽に

東志郎の写真日記

同和問題

リンク