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東京人権連 > 同和問題について > えせ同和行為について > 「地域と人権」07年4月号論文
      

月刊「地域と人権」2007年4月号掲載論文、えせ同和行為の実態と対処法

東京人権と生活運動連合会   書記長  洞口 浩史

はじめに

 昨年の本誌7月号に「えせ同和の実態」を掲載して半年。 また同じような事件が起こり、7月号で私が名前をあげて「えせ同和」と指摘した団体がらみで、ついに逮捕者が出ました。今回は元国会議員の名前も実名で報道されるなど、波紋が広がっています。

 そこで昨年7月号と重複する部分も出てきますが、あらためてえせ同和行為の実態と対処法についてまとめてみました。
  

えせ同和書籍の押し売りで逮捕者

 1月26日、広島地検が「トラストジャパン」(広島市中区八丁堀)という書籍販売会社社長の李一雄(63)と妻の由美子(58)、同社役員相本浩(59)および「セラム」(福岡市)という書籍販売会社役員の三角秀正(50)の4容疑者を、所得税法違反及び法人税法違反容疑で逮捕、トラストジャパン事務所ほか18カ所を捜索しました。 また2月16日には、李一雄・相本浩両容疑者を恐喝容疑で再逮捕、相本容疑者が経営する「ユニオンKA(ケイアイ)」(岡山市)という書籍販売会社役員の上本澄洋容疑者(39)も同容疑で逮捕しました。 「トラストジャパン」が販売していた書籍は、大阪市の政治団体「全国同和人権促進会」やその関連団体「政治経済新改革連合」などが発行したもの。 両団体は昨年12月、解散届を出しています。 調べによると李容疑者らは2005年12月から2006年3月にかけ、広島や岡山などの事業所の8人に電話をかけ、「街宣車を行かせたら迷惑だろう」などと書籍購入を強要。 4万8000円から5万2500円の書籍を売りつけ、計約40万円を脅し取った疑いが持たれています。 さらにこの2団体の代表に、旧社会党副委員長の和田静夫元国会議員が就任し、個人の銀行口座には李容疑者側から1000万円を超える入金があったことも明らかになっています。 和田氏本人は、両団体の代表に就任したことは認めているものの、「活動内容についてはまったく知らなかった」と関与を否定しています。

 ……以上が「中国新聞」などからの要約ですが、この記事には多くの反響があったようです。 私は全国人権連で「えせ同和対策担当」となっていますが、「自分も同じ被害にあった」「違う団体からだが、似たような被害にあって困っている」などの相談が、このところ急増しています。 とくに1月26日の李容疑者ら逮捕後、「全国同和人権促進会」の被害相談が急増したことを考えると、「解散届」は提出したかも知れませんが、実体上は解散していないで「駆け込み利権あさり」をおこなっていることも明白です。 報道では被害者が8人で被害総額が40万円となっていますが、昨年4月から今年2月上旬までで、「全国同和人権促進会」関係の被害相談は、東京人権連に93件寄せられています。 東京人権連のウェブ・サイトを見て相談してきた人数がこの数字ですから、泣き寝入りしている人が8しかいないとは、とうてい思えません。 また代表者が「和田静夫」であることを、彼らはよく口にしていたようです。 元国会議員の肩書きを「えせ同和疑惑」払拭に利用して利権あさりをしていたわけで、和田氏が「まったく知らなかった」と言っても、容易に首肯できることではありません。
     

えせ同和行為の手口

 えせ同和行為の手口で一番多いのは、やはりこの書籍の押し売りです。 「全国同和人権促進会」なら5万2500円、えせ同和の「老舗」であり、一番相談件数も多い「同和文献保存会」なら5万9000円のものが主流です。 電話の手口はいろいろですが、「そちらもご商売でしょうから、40人もの人間が押しかけたら迷惑でしょう」「買わないなら街宣車をまわしてお宅の近くで宣伝しようか?」「うちは山口組と関係があるんだ。言うことを聞いたほうがいいぞ」などの脅迫行為や、やたらなれなれしく、ソフトなムードで話を進めて行くなかで書籍購入を依頼し、断られようがなんだろうが一方的に書籍を送りつけてくるケース、断られると「うちの代表に代わります」と言って、「代表」なる人物が「たしかに現物を見ないと、買うかどうか決められませんわなぁ。 それじゃお宅の住所も知っていることだし、うちの若いのに届けさせましょうか」などと、口調はソフトでも脅しをかけてくる事例などが報告されています。 また最近では、団体名を名乗らずに個人名で電話をかけてきたり、「○○興業」などと架空の団体名・個人名を名乗って電話をし、送られてきた書籍が「同和文献保存会」などという事例も増えています。

 さらに「全国同和人権促進会」が「政治経済新改革連合」と表裏一体であるように、「同和文献保存会」は「政治・経済研究会」と、「同和事業統一協会」は「日本愛国連合」と表裏一体となるなど、えせ右翼団体も名乗って、一度どちらかの団体から書籍を購入すると、もう一方の団体からも書籍の押し売りが始まるケースが非常に多くなっています。 ほかに書籍の押し売りをするえせ同和団体としては、「同和対策研究会(大阪市西区)」「部落解放協議会(大阪市淀川区)」「日本自由同和連盟(大阪市港区)」「全国人権対策協議会(大阪市東成区)」「全国人権啓発連合会(東京都千代田区)」「被差別部落解放協会(東京都中央区)」「同和改革推進連合会(東京都練馬区)」「部落解放人権協議会(兵庫県姫路市)」「全国同和人権擁護会」「日本同和解放全国連合会」「全日本同和連合会」と、この2年以内に被害相談があった団体だけでも、これだけ多数にのぼります。

 ほかに、公共工事を受注した企業に対し、下請けの優先受注や飯場建設、道路整理員の派遣などを優先的にやらせるように要求する手口があり、これをやる団体に「自由同和会東京都本部(東京都中野区)」「全国同和部落協議会水平社(東京都新宿区)」「全日本同和事業連盟(東京都)」「全国同和審議会(名古屋市中川区)」などがあります。 これは行政の担当者に電話をかけ、担当者の名前を聞き出した上で、「うちの団体に仕事を回せ、などと言う必要はないが、うちの団体から連絡が行くことを、相手の企業に告げておいてくれ」という言い方をするもの。 個人名を確認された行政担当者がこわくなり、公共工事受注企業に「こうした団体から電話が行くから、話だけでも聞いてやってくれ」と言うので、受注企業には「発注主の言葉だから、断ると次から入札に不利になるのではないか」などの疑心暗鬼を引き起こし、結局はえせ同和団体の言いなりになってしまうケースもあります。 これらは行政担当者がえせ同和行為に手を貸しているようなもので、「公務員の守秘義務違反」「利益誘導」に該当するのではないでしょうか。 許されることではありません。
           

本家は「解同」

 えせ同和行為の本家は、やはり「解同」(部落解放同盟)です。 えせ同和団体が利用するのは、「同和を名乗れば無理が通る」という「こわい意識」です。 これを作り上げ、育て上げてきたのが、暴力と利権をこととする「解同」であったことは論を待ちません。

 1970年代をピークとする「解同」による暴力的な「確認・糾弾」によって、「部落はこわい」「なにをするかわからない」という意識が広まりました。 「解同」はこれを利用し、行政に無茶な要求をして利権あさりをくり返してきたのです。 「解同」中央本部のウェブ・サイトを見ると、利権あさりの実態が明らかになるたびに「個人責任」にすり替え、ごまかそうとしていますが、「解同」奈良県連の「再生への決意」にあるように、「『同和対策特別措置法』(4年前に失効)下33年間の『膿』を出し切る」と、つい本音を漏らしてしまうこともあります。 奈良県連が素直に同特法下33年間で「膿」がたまっていることを認めたように、事実奈良だけではなく、大阪市、京都市でも問題がありましたし、ハンナンやフジチクなどBSEがらみの利権あさりもありました。 暴力的な人権侵害では、高知の小笠原事件、三重の弓矢事件など、こんにちでも平然と「部落はこわい」意識を振りまいて恥じないのが「解同」です。

 えせ同和団体は、「解同」がつくりあげたこの「部落はこわい」意識を最大限に利用し、脅しつけるようなことを平然と言うのです。 そしてこれら「解同」の事件がすべて、行政がらみで引き起こされていることを考えたとき、行政が第三者のような顔をして「えせ同和行為は、『部落はこわい』という誤った意識に乗じておこなわれる」「だから同和問題への正しい理解と認識が必要」「えせ同和行為には、勇気をもって立ち向かうことが重要」などと、読み方によっては「被害者の意識が低いから悪い」と言わんがばかりの「啓発」を、上から「説教」のようにすることは許されません。 真摯に行政としての反省を確立するとともに、えせ同和行為をくり返す団体名とその内容を公表したり、被害にあった人は具体的にどのように対処すべきかを発表したり、被害者を救済する方向での啓発をしなければ意味がありません。
     

えせ同和団体の正体

 えせ同和団体は多くの場合、右翼・暴力団や総会屋、えせ右翼などと結びついています。 暴対法施行以後、広域暴力団が生き残りをかけてでっちあげた団体も多いようです。 背後にはこうした暴力団が控えていますが、「よみうりテレビ/ニューススクランブル」の取材によれば、実行部隊はアルバイトの中高年。 面接で「低くてドスの効いた声」の持ち主を採用し、対象者名簿とマニュアルを渡して、片っ端から電話させているようです。

 そのために脅すようなことは平然と言いますが、実際に行動に移すことはまずありません。 恐喝容疑で「全国同和人権促進会」関連事件でも逮捕者が出たように、電話で脅しただけでも十分に恐喝罪は成立しますが、録音でもしていない限り、「言った」「言わない」という水掛け論になってしまうため、立証がむずかしいのが現実です。 万一、本当に街宣車で乗り付けたりしようものなら、間違いなく威力業務妨害(営業妨害)も併発します。 えせ同和団体はそのことを熟知していますし、そもそも「街宣車」を持っている団体などありません。 5万円の書籍を買わせるために40人もの人間を動員したり、街宣車をまわしたりするのも、コスト的にペイしません。 結局彼らが言っていることは、口先だけの脅しに過ぎないのです。

 「全国同和人権促進会」も「同和文献保存会」も、相手が即答しないと「相談するまでもないだろう」「いますぐ返事しろ」などと言いますが、これは「特定商取引に関する法律」第6条3項「威迫・困惑」に抵触します。 また「これまで電話をして、買わなかった会社はない」などと言うこともあるようですが、これは「虚偽による勧誘」であり、同法第6条1項の「不実告知」に該当します。ところが彼らえせ同和団体は、アルバイトがマニュアルに基づいて電話をしているだけなので、こうした法律論を持ち出されるときわめて弱いのが実態です。

 えせ同和団体の不勉強は、法律論だけではありません。 同和問題の書籍を売っていながら、同和問題についても恐るべき無知ぶりを発揮しています。 相談に来た方に、東京人権連の名を使っていいからと言って断っていただくと、「全国同和人権促進会」から東京人権連に電話がかかってきたことが複数回ありました。 私が相手にいろいろ聞いたのですが、彼らは全国人権連と全解連の関係、全解連と「解同」の関係など、基本的なところがまったくわかっていません。 ついでとばかり、水平社創立の年月日、水平社宣言の執筆者と言われる人物の名前、関八州の穢多頭と言われた人物の名前、最後の特別措置法の名称など、同和問題にかかわった人間なら即答できるような質問をしてみましたが、彼らはどれひとつ答えられませんでした。 私が「その程度の知識で同和問題の本を売るな」と言って以降、少なくとも東京人権連には、「抗議」の電話はかかってこなくなりました。

 えせ同和団体の目当ては、所詮は金銭です。 一度でも書籍を購入すると、関連団体から電話がかかってきたり、違う図書を押し売りされたりします。 東京人権連に相談なさった方のなかでは、7年連続で書籍を買わされている人や、「これで最後にしてくれ」と言ったら、次には電話もなくいきなり書籍と振り込み用紙が送られてきた人もいます。 逆に東京人権連と相談し、その助言にしたがって断った場合、二度と電話をかけてくることはないようです。 相手は一歩引けば二歩踏み込んでくる団体です。 逆に毅然として対処し、「ここは金にならない」と思われれば、拍子抜けするほどあっさり引き下がります。 「断ったら嫌がらせをされるのではないか」というご心配が非常に多いのですが、彼らの目的は金銭ですので、断られた相手に延々と嫌がらせをするより、次の名簿に電話をするほうを選びます。
             

書籍押し売りの撃退法

 もしえせ同和やえせ右翼から電話がかかってきたら、まず深呼吸して落ち着きましょう。 相手の口調に驚いて、向こうのペースに乗せられてしまうと、断ることがむずかしくなります。 「うちにはそういった書籍は必要ない」と、毅然として断れば大丈夫です。 相手が「なぜ買わないのか」と言ってきても、答える義務はありません。 しつこいようなら、相手の団体名と連絡先を確認してください。 そのうえでもう一度、「そう言った書籍は必要ない」と断って、電話を切ってしまってかまいません。 それでも電話がかかってくれば、「あなた方の電話で、仕事上迷惑になっている。 あなた方の要求を聞くつもりは一切ないので、これ以上電話をしてこないでくれ。 これ以上電話してくるなら、威力業務妨害に該当すると思うので、法的措置を検討する」と、毅然と断りましょう。 法律論を持ち出すと、相手は途端に弱くなります。

 こわくて断り切れなかった場合や、あまりのしつこさについ承諾してしまった場合は、書籍が届いた段階で、すぐに東京人権連にご相談ください(電話=03―5806―3473、メールアドレス=tokyojinkenren@yahoo.co.jp )。 クーリング・オフを活用すれば、契約を解除できます。 契約解除のやり方、その後の対応などについて、東京人権連では誠意を持って対応しています。

 了解していないのに、一方的に書籍が送りつけられてくる事例もあとを絶ちません。 その場合は、「この書籍については契約していない」と明記した文書を添付して、拒絶の意志の強さを示すためにも着払いで相手に返送することが重要です。 このような場合、一般的には「特定商取引に関する法律」第59条(売買契約に基づかないで送付された商品)が適用され、当該図書の引き取りを請求してから7日間、または当該図書等が送られてきた日から14日間が経過すれば、自動的に相手方は商品の返還請求ができなくなりますので、自由に処分してもかまいません。 これは「一定期間内に返事または返送等がない場合、購入を承諾したものと見なします」などの文書が同封されていても、そのような一方的な「みなし文言」は無効となりますので、遠慮なく処分できるのです。 しかしトラブルを避けるのであれば、着払いで返送した方が無難でしょう。 このときも、その後の対応について不安があれば、東京人権連までご相談ください。
           

終わりに―えせ同和行為を撃退したら

 えせ同和行為は、政府も「同和問題の解決を阻害する新たな要因」として取り上げ、その排除に全力をあげています。 しかし行政には限界があります。 警察は基本的には民事不介入ですし、実際に刑事被害が出ないとなかなか動けません。 ですから東京人権連は、全国水平社の流れを正しく受け継ぐ民間運動団体として、えせ同和行為の排除はもちろん、えせ同和団体から住民・企業を守るため、全力をあげています。 えせ同和行為の被害に遭われた場合は、まず落ち着いて対処するために深呼吸すること、そして東京人権連にご相談いただくことが、被害を大きくしないためにも重要です。

 万一被害にあった方は、東京人権連にご相談いただければほとんど解決できます。 しかし解決したからと言ってそれで終わりにするのではなく、ご協力いただきたいことがあります。

 えせ同和団体は、業界名簿などを使って電話をすることが多いようです。 業界の集まりなど、ついでのときで結構です。口コミでかまいませんから、「このようなことがあった」「東京人権連に相談したら、こう言われた」ということを、業界内部に情報として流していただきたいのです。 そうすれば、新たな被害は防げるのではないでしょうか。

 このようにして助け合っていくことで、少しでもえせ同和行為の被害者が減り、えせ同和団体の暗躍に歯止めをかけられることを祈念しつつ、本稿を閉じたいと思います。

(ほらぐち・ひろふみ)

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